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爆笑絵画???】 2006/06/30(金)
このHPで公開したことはないんですけどね、普段はけっこうビッグサイズの絵を描いたりします。この作品は、もう二ヶ月近くも前のことになりますが、「第24回上野の森美術館大賞展」という展覧会の会場で展示されていたものです。
じつは自分の絵のスタイルからいうと、こういう大きさはあまり得意ではないんですね。もし人物を描くのなら、モデルの毛穴のひとつひとつまで描き込まなくては気が済まないようなタイプなので。ここまで大きい画面だと、絵としての完成度を高めるのにもかなりの時間が必要になるというわけです。
そのための時間がたっぷりとあって、のんびりとやれれば一番なわけですが、いつもそうとは限らない。あらかじめ決めたサイズを計画通りにきっちりと仕上げる――そういうのも絵描きの力量ということになるのでしょうか。その意味で、それなりに苦労した作品ではなかったかと思います。
自分のやりたいことと自前のスキルとの間に距離があるという問題。一種の「技量の壁」ということになると思いますが、今回の制作にはそういう種類の課題があったようでした。だから、その“得意でないサイズ”をどうしたらスンナリとこなすことができるのかが主要なテーマになりました。ちなみに、等身大の老婆(母ですけど)を描いたこの絵の制作期間は一ヶ月半。わたしとしては“猛スピード”の作業です。制作中は“どこを省略したら早く描けるのか”なんてことばかりを考えていまして、とりあえず「毛穴」は描かなくていいことにしました(笑)。
三年前から始めた箔の使用もまた「壁」のひとつでした。洋箔(真鍮の箔)を人工的に劣化させてつくる下地はオリジナルの技法です。でも自分で考案しておきながら、ここまでの大画面では試したことがなかった。画面全体を覆う箔を均等にサビさせるのは本当に難しい作業なんです。これまでに、それこそ千枚、二千枚という箔をムダにしましたけど、だからといって自分が“熟練している”なんて恥ずかしくてとても言えません。奥が深すぎますよね、こういう世界は。
絵にはヘンテコな題名をつけました。《 オールドマミー・ア・ゴーゴー! 》というタイトル。面白くありませんか!?
大昔、40年くらい前のことですけど、ポップソングやロックのレコードに「〜・ア・ゴーゴー」というタイトルのものがよくあったんですね。わたし自身もグループサウンズ「ザ・スパイダース」のドーナツ盤で『ザ・スパイダース・ア・ゴーゴー』というのをもっていました。
絵の題名はその言い回しをそっくり拝借したもので、老いた母親が踊っているので《オールド・マミー・ア・ゴーゴー!》なわけです。
思わせぶりなところがひとつもない、こういうストレートなネーミングもたまにはいいんじゃないかと思いました。‥‥‥というか、本心には、あまり“芸術的な印象”を与えたくない、というのがあります。
描いている対象は、とくに美しい衣装をまとっているとかではない、ごく普通のお婆さんです。むしろ垢抜けない格好をして、しかもかなり気楽な感じで踊っているだけの姿――これは普通の意味で言って“美的な対象”ではないでしょう。もしそこに何かを認めるとするなら、せいぜいが“元気に踊る老人の存在そのもの”くらいであるはず。作者としては、それをただ肯定的に描きたかっただけなんです。
この絵を会場で見てくれた友人のKちゃん(不発弾氏)からもらったメールには「絵もさることながら、タイトルとの組み合わせが何とも秀逸だと感心しました」とありました。「Kちゃんったら〜スルドイっ!!!」です。
描いたのは今年に入ってからでしたが、作品の構想そのものは昨年秋から考えていました。なんとなく「爆笑絵画」という言葉が浮かんできたりして、それをぶつぶつと唱えながら制作の計画をたてたのです。絵画のなかに“爆笑”なんて領域があるとは思えませんが、例えば鳥獣戯画のような中世の絵巻であるとか、あるいは現代美術なら鶴岡政男の晩年の作品なんかには笑いやユーモアみたいなものを感じますよね。過去にそういう例があるわけですから、こちらだってそういうことを堂々とやってかまわまいのだなと。
‥‥‥やっかいなのは、80歳を過ぎた老母にモデルをしてもらうことでした。こちらには最初から美人画みたいなものを描くつもりはありません。とにかく、「スカートがなければバスタオルでも腰にまいて半狂乱で踊ってくれぇ!
面白い絵になるんだから!!!」ってな感じで一方的に押し切ることに。ノリのいい母親だったのはラッキーでした。二人して笑い転げながら資料用の写真を撮りましたけど、撮影しているうちに、もう彼女には半狂乱になって踊る体力など残っていないのだとわかってきて、そのあたりはちょっと寂しかったですね。その点では「爆笑」ではなく「苦笑絵画」だったのかもしれません。
そんなこんなで、5月の連休にはめでたく美術館で自作を鑑賞できたわけですが、多忙で知り合いへの連絡を徹底できなかったのが悔やまれました。それでも会場でお客さんの反応はしっかりと観察。作者が後ろにいるとも知らずに「きゃー、これいいよぉ〜〜。靴下の短いとこなんかさぁ〜」なんて言いながらケータイのカメラで撮影をするお嬢さんたちがいましたね。けっこうウケているみたいでした。それと(人から教えてもらって知ったのですが、)たまたまこの絵を見た人が、それをネタにしてMIXIの日記を書いていたりとかもありました‥‥‥全く面識のないお嬢さんでしたが題名まで記憶していてくださいまして。
お笑い稼業をしているわけではありませんので、作品が“ウケりゃいいってモンじゃない”ことは承知しています。でも、自作を人様に笑ってもらってこれほど嬉しかったこともありませんでしたね。
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