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拝啓ラ・トゥール様
覚えてますか?私のことを。かつて上野のお山に、ミレーのお供をして貴方は「大工ヨセフ」を携えて来てくれましたよね。あれから40年近く経ちました。当時は海外からの美術展の黎明期、会場は大変な混雑でしたね。
貴方の絵の前から離れずに見入っていた子供がこの私です。その絵は他を圧倒していました。静謐な画面は、リアルを超越した光を放出し、且つ抜群の構図構成。忘れるはずなどありません。同年齢くらいの孝行息子はキリストと知ったのは随分のちのことでした。
「ラ・トゥールやるよ」西美の高橋氏に告げられた時は、秘かに動揺しました。貴方に長年思い入れの深い私が、その作品を展示するための会場造りをするとは。
どうでした会場の居心地は? 想像を超える数の人達が、作品を一生懸命に見入る姿を見て私は大満足でした。お子さん連れも多数見受けられて、本当に嬉しかったな。デザインをする前に、貴方の作品達とは随分話しをしましたね。私が会場デザインをする時、心の中にいつもあるのは、子供には大人と同様、それ以上の感覚・感性が存在するということです。これを教えてくれたのが「ラ・トゥール」でした。あのとき貴方に出会わなければ、私は今この仕事をしていないような気がします。思えば、それほど貴方に翻弄され続けた人生だったのかも知れませんね。また会ってくれますか?。
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追記:本来の原稿ご依頼の主旨とは違うかもしれません、何を語りたいかというより、ラ・トゥール本人に語りかけたい、そんな思いが生まれました。
常々、私共のような裏方スタッフは、埃にまみれながら会場造りをしています。「業者」と呼ばれる立場ではありますが、その一人一人がそれぞれの思いの上に、作品に対して真摯な愛情を抱いて仕事をしています。このようなことも知っていただければと思います。 |
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