「めぐり逢う朝」というフランス映画がありました。十数年前に日本でもかなりヒットした映画でとにかく画面が印象的でした。明け方の夜空、嵐の場面などは大変なハイテクを使って撮影したそうです。最後に師弟が二重奏をする場面では、蝋燭の光に透けた赤ワインのグラスと皿に載ったシガールがあって、それはラ・トゥールの絵画そのものでした。以来その画面から醸し出される、宮廷外の人々の深い思いが、気になっていました。 同時開催の演奏会では、フランスで大人気というル・ポエム・アルモニークの熱演に出会い、珍しく、言葉が分からないことを忘れて楽しみました。声良し、喋り良し、演技良しの上に、楽器群もよく見ると18世紀のギンギンの宮廷仕様も混ざっているのに、すっかり17世紀庶民の雰囲気が出ていて、さすがに自分の国の音楽なのだなあ・・・と。歌詞は繰り返しが多くて分かりやすく、内容は万国共通の、戦いと王に起因する愛と悲劇、泥棒、酒の歌といったところ。打楽器やヴィエルの曲弾きも吉田兄弟顔負け。 絵画の見どころと真贋までも包み隠さず展示していただいて、素直にその時代の人々の生き様は?という気持ちになったところで、名演奏。確かに、あのように洗練されていて本当か、とは思うものの、今日ではバロック音楽の代名詞ともなっている宮廷音楽の外と裏の、ここでは絶対王政に虐げられた人々の音楽が生き生きと愉快で時に悲しい物だったことが、納得いくものでした。こうした庶民的な主題にも拘わらず、心打つ上質の絵画と音楽があり、これを結びつけて「その時代を写そう」としたところが、この展覧会の画期的といわれる所以なのだと思います。音があったことでラ・トゥールの画面は突然動き出しました。