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長崎 巌 NAGASAKI
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1953年大阪府生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。工芸史専攻。東京国立博物館染色室長を経て、共立女子大学家政学部教授。所属学会:国際浮世絵学会、美術史学会、国際服飾学会、服飾文化学会。きもの文化賞受賞(2005年)。
主な担当企画展覧会としては「共立女子学園コレクション 華麗なる装いの世界 −江戸・明治・大正−」2005年
、
「KIMONO −小袖に見る華・デザインの世界−」2006年 、「大名から侯爵家へ −鍋島家の華−」2007年、
「When Art Became Fashion ― Kosode in Edo Period ―」1992年
Los Angeles County Museum of Art (協同監修)
「Katagami―型紙とジャポニスム展」2006年 パリ日本文化会館(協同監修)などがある。
著書に『美術館へ行こう・染と織を訪ねる』(新潮社)、『日本の美術 小袖からきものへ』(至文堂)、『平安の配彩美 春夏秋冬 かさねいろ』(ピエ・ブックス)、『きものと裂(きれ)のことば案内』(小学館)などがある。
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それ自体を目的としている人もそうでない人も、パリを訪れる人々の多くはその滞在中にいくつかの美術館へ出かけて行く。ルーヴル美術館とオルセー美術館はその中の定番であろうが、少しパリに詳しいと自負する人ならば、ルーヴルよりもオルセーのほうが好きだというかもしれない。美術館がそれぞれ収蔵品の内容や作品の展示方法に特徴を持っていることからすれば、見る側が自らの好みに合わせて出かける美術館を選ぶのは当然である。
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オルセー美術館(パリ)
Photo:(C)Akiya Takahashi
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パリを訪れるオルセー美術館のファンの多くが駅舎から改装された美術館の建物そのものや、その中に配された作品を雰囲気とともに観賞するとしても、そのコレクションが19世紀のフランス美術を中心とするものであることからすれば、当然これがオルセー美術館の特徴ということができる。
しかし時にある美術館のコレクションを他所あるいは他国へ持ち出して展示することがある。その場合には、作品は美術館の建物を離れるから、その美術館の特徴のどの部分を観客となる人々に見せるかということが、そのような展覧会の重要なポイントとなる。コレクションのハイライトとなる作品を選び出して、美術館の全体的なイメージを伝えようとするのか、あるいはコレクションの中から展覧会を行う地域や国の観客が最も喜びそうな特定の分野の作品を選び出して展示するのか、一般にはこのいずれかが無難な方法として選ばれる場合が多い。
このたび日本で開催されている「オルセー美術館展 19世紀 芸術家たちの楽園」は、こうした常套的な、あるいは安全な方法をとらず、思い切った切り口でオルセー美術館コレクションの真髄を十分に堪能させてくれる展覧会である。一般に展覧会の方向付けは、企画者の研究者としての実力や学芸員としての幅の広さ、そして企画に対して決裁権を持つ美術館上層部の度量のほどが反映されるが、この展覧会には、内容的な面白さだけでなく、そうした意味での個人の力や組織としての思い切りの良さが感じられる。
この文を記している私自身、もともと展示や展覧会を企画する立場にあり、また教員という立場に転進して後も、しばしばそのような機会を与えられているが、展覧会を企画する時には、さまざまな条件の中で、必ずしも思い切った企画に踏み切れないことが多い。
この展覧会は、芸術家たちの創作のきっかけとなり、環境となった場や場所、人々に注目しつつ作品を鑑賞し理解しようという試みである。しかもこの展覧会以前に1996年と1999年の二回にわたり、「モデルニテ パリ・近代の誕生」「19世紀の夢と現実」と副題される展覧会が開催されており、これらによって19世紀から20世紀初頭の社会背景や時代精神と文化の関係を意識しながら作品を理解するという過程を経て、本展覧会をもって三部作の最終章を迎えるというものである。
概して研究をそのまま作品で表現しようとするような展覧会では、しばしば理屈倒れの憂き目に会うことが多いのだが、この展覧会においては展覧会全体の流れの中でむしろ新鮮な感動を感じることができる。各セクションでは具体的な観点を設定して作品を鑑賞するが、そのそれぞれの視点もまた瑞々しい。
このように筆者の立場からは、内容的にも、また展覧会としてのあり方に関しても興味深い展覧会である。
(共立女子大学教授 長崎 巌)

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